川嶋「高須く〜ん!」
竜児「どうした川嶋?」
川嶋「あしたぁ、亜美ちゃんがお弁当つくってきてあげようかぁ?」
竜児「なっ、なんで急に!?」
大河「ばかちーあんたいきなりかわいこぶって何企んでんの?」
川嶋「だってぇ、高須くんいつも2人分お弁当作ってて大変でしょ?お連れのおチビちゃんはどーせ料理なんてできないだろうし、高須くんの苦労をわかってないみたいで高須くん可哀想。たまには高須くんにお休みあげないと…ね?」
竜児「い、いやっ、悪いって、いいよ!」
川嶋「遠慮しなくていいのっ、明日は高須くんはお弁当持ってこなくていいからね、じゃ楽しみにしてて!」
竜児「お、おいっ…!」
大河「…」
竜児「なんなんだ一体…」
大河「…帰る」
竜児「おう、スーパー寄って帰るか、夕食何がいい?」
大河「…いらない、一人で帰る、あんたん家にもいかない」
竜児「はぁ!?っておい大河!待てって!」
竜児「はぁ…弁当作んなくていいのはラクだが…なんだか気は重くなったな…」
ガタッ…ガタッ
竜児「…なんの音だ?っと、もう6時前か、朝飯作って大河起こしに行かないと」
大河「おはよ、竜児!」
竜児「大河!?何でこんな朝早くからウチに!?」
竜児「っ!しかもちゃんとした朝飯まで用意してあるじゃねぇか!」
大河「はい、お弁当」
竜児「弁当まで!?サラダや目玉焼きすら作れなかったおまえが急にどうしたんだ?」
大河「寝言?あんた寝てんの?あんたにできてわたしにできないことなどないわ!」
竜児「はいはい…って大河、おまえ手バンソーコーだらけじゃねぇか…」
大河「こ、これは、その…」
竜児「…そうか、昨日川嶋に言われたことを気にして…」
大河「ば、ばかちーなんて関係ない!わ、わたしの偉大さを竜児に今一度しらしめてやろうと…」
竜児「そういうことにしといてやるよ、だからちょっとこっちこい」
大河「?」
竜児「おまえのことだ、ちゃんと消毒もしてないんだろ?ほら、手出せ」大河「…ん」
竜児「ちょっとしみるけど我慢しろよ」
大河「…っ!!いっ、いったぁぁぁぁぁぁぁい!!あんたこれのどこがちょっとなのよ!」
竜児「ぐわっ!おまえ目潰しはよせ!」
大河「ったく…ほら、トロトロしてないで痛いんだから早く終わらせなさいよね」
竜児「おまえが目潰しするからだろうが…」
大河「なんか言った?」竜児「な、なんでもねぇ、あとはバンソーコー貼り直して…よし、これでいいだろう」
大河「…終わったなら手ぇ離しなさいよ」
竜児「いいから大河、このまま聞け。」
大河「?」
竜児「俺はおまえの朝飯から弁当、夕飯と確かに全て作ってる。だが作ってやってる、なんてつもりはないしそのせいで特別苦労してるなんてことはない」
大河「…だ、だからばかちーの話は関係な…」
竜児「もちろんおまえに感謝されたくてやってるわけでもない。俺が勝手にやってるだけだ、迷惑か?」
大河「…ううん」
竜児「そうか、良かった。俺はおまえのためなら料理なんて喜んでやる、掃除だろうと洗濯だろうとおまえのためなら苦労でもなんでもないんだ」
大河「……」
竜児「だから…」
大河「だから…?」
竜児「おまえは傍にいてくれるだけでいい」
大河「…!りゅ…うじぃ…」
竜児「いつもそんな傷つくられちゃ手も握れなくなっちゃうしな」
大河「…りゅうじぃ、ごめんね、いつもありがとう…」
竜児「おまえが謝ることないだろう、不安にさせて悪かったな、何があっても俺達は一緒だ、だから泣くのはよせ」
大河「うん…うん…ありがとう、りゅうじ…」
竜児「さ、せっかく大河が作ってくれた料理が冷めちまう、食おうぜ」
竜児「大河、今日は塩と砂糖間違えてないだろうな?」
大河「だ、大丈夫だもん!…たぶん」
竜児「…ひとつ料理のアドバイスをしてやろう、味見は必ずしろ!」
大河「う、うるさいわね、あんた小姑?つべこべ言わずに早く食べなさいよ!」
竜児「どれ、じゃあいただきますっと…」
大河「どう…?ちゃんとできてる…かな?」
竜児「…うん、うまい…!」
大河「ほんとにほんとに?クッキーのときみたいに無理してない?」
竜児「ちゃんとうまいぞ。やればできるじゃねぇか大河!」
大河「ほんとに?また気遣って嘘ついてない?」
竜児「なんだよ、今日は随分弱気だな、いつもなら自信満々に出るとこだろ?」
大河「…」
大河「あのね…わたしドジでしょ?そのせいで誰かのために何かやってもうまくいったことなかった。それに…今回は竜児の助けもなかった。だからいつも以上に頑張ったの。そうしたらね、いつも以上に失敗が怖くなって…」
竜児「大河…」
大河「…竜児のために頑張ったの。でもまた竜児を困らせちゃったらどうしようって…」
竜児「…大河、口開けろ。」
大河「?」
竜児「ほら」
大河「な、なによいきなり…ってんんっ…!」
モグモグ…
大河「あ、おいしい…おいしくできるてるよ、竜児!」
竜児「ああ。確かにおまえはドジだ。でもおまえの頑張りはちゃんと実になってるよ。それに…おまえの気持ちもちゃんと届いてる。ありがとうな、大河。」
大河「…そっか。そうだよね。竜児はそうやっていつもわたしを見ててくれてるんだよね。」
竜児「俺だけじゃないだろ?」
大河「え?」
竜児「櫛枝がいる、北村がいる、川嶋がいる。みんなおまえのことが大好きなんだよ。」
大河「…」
竜児「みんなおまえがどんなにドジをしようと…いつも頑張ってるおまえを応援してる。みんなそのままのおまえの周りに集まってきただろ?」
大河「…そうなのかな?でも…きっとそうだよね、わたしも竜児を、みんなを信じてる。」
竜児「当たり前だ。」
大河「そんなことも忘れてたなんてやっぱりドジよね…何を不安になってたんだろう。」
竜児「まったくだ。」
大河「…わたし、わかったわ。」
竜児「?」
大河「よく考えたら家事大好きの主婦みたいなあんたに家事の助けなんていらないし、バカチワワの言うことにいちいち落ち込んでたのもバカみたい。」
竜児「…」
大河「わたしはわたしに出来ることでみんなの力になる!」
竜児「そうだな。じゃ料理ができることもわかったし今日からメシについては手伝…」
大河「断る!」
竜児「!?」
大河「言ったでしょ、あんたの取り柄は家事。家事のみ!わたしのために掃除して、洗濯して、おいしいご飯を作りなさい!」
竜児「おまえなぁ…」
大河「それにね…」
竜児「?」
大河「わたしは…その…やっぱり竜児の作ったご飯が…一番のご、ごちそうだから…ね…」
竜児「…何赤くなってんだ?」
大河「なっ…なってないわよ、バカ!あーもう、あんたほんと鈍感ね、早くも信頼が揺るぎそう。」
竜児「よくわからんがおまえの切り替えの早さは恐ろしいくらい早いな。」
大河「何よ、あんたの説教真に受けて出した結論よ、文句あんの?」
竜児「はぁ…ねぇよ。さ、時間が時間だ、早くメシ食って学校行くぞ」
大河「朝早くから疲れたのとバカチワワへの怒りで空腹も限界だわ…早い者勝ちっ!」
竜児「おっ、おまえ汚ねぇぞ!…っては、はえぇ…」
大河「はぁ、お腹いっぱい。さ、学校行くんでしょ?」
竜児「おまえ俺のために作ったんじゃ…」
大河「うるさいわね、あんたのお茶碗にまだお米残ってるじゃない。早く食べなさいよ。」
竜児「…結局おかずは最初の一口だけかよ…」
大河「あんたが食べないならわたしが食べるわよっ!」
竜児「よ、よせっ!せめて米だけは!」
竜児「じゃ泰子、学校いってくるぞ。大河が食っちまったからメシはなしだ。パンでも食ってくれ。」
泰子「えぇ〜竜ちゃん準備わるい〜…」
竜児「文句は後で大河に言えよな。」
大河「やっちゃんにはコレあげるよ。テーブルに置いとくから食べてね。」
竜児「お、おいっ、それおまえのべんと…」
大河「今日はわたしが作ったんだよ。残さず食べてね!」
泰子「大河ちゃんやさし〜、ありがと〜…zzz」
大河「いいのっ、やっちゃんもいつもありがとね!じゃ、行ってきまーす。」
竜児「おい、おまえ良かったのか?」
大河「最初からそのつもりだったからいいのよ。」
竜児「最初から?」
大河「あんたは今日ばかちーからお弁当貰えるでしょ?」
竜児「あぁ、そういえば…ってことはコレはおまえの昼飯ってことか?」
大河「あんた呆れるを通り越して殺したくなる程ニブチンね。」
竜児「は?」
大河「それはあんたのために作ったの。あんたが食べないでどうすんのよ。わたしがばかちーので我慢してやるって言ってんの!」
竜児「…それ、川嶋怒んねぇか?」
大河「知ったことか!仮にあんたに食べさせようとしてもわたしが食らいつくわ!」
竜児「…すまん、川嶋…」
大河「なんか言った?」
竜児「いや、なにも言ってねぇよ。っと、あれは…」
大河「みのりーん!!」
櫛枝「お、今日も仲良くアベック登校かい?熱いね〜、なんだかわたしも燃えてきたよ!」
大河「だからアベックは古いよ、みのりん。」
竜児「(なんで櫛枝が燃えてくるのかツッコミたい…)」
櫛枝「あれ、大河!その手の傷はどうしたの?」
大河「あのね…昨日竜児が…グスッ…」
竜児「!?」
櫛枝「…高須くん。説明してもらおうか?返答次第じゃ…わたしはキミを許さないぞぉ〜!」
竜児「ちょ、ちょっと待て櫛枝!落ち着け!」
大河「…ぷっ…くくくく…」
竜児「何笑ってんだ大河!ちゃんと説明しろ!」
櫛枝「…なーんてね!昨日大河から聞いてるよ、高須くんのために料理するからいろいろ教えてくれってね。」
大河「あんた慌てすぎー!わ、笑いが…止まらな…」
竜児「う、うるせぇ!……ま、通りでいきなりあんなにうまく出来たわけだ。さすが櫛枝だな。」
櫛枝「チッチッチー、それは違うよ高須くん。わたしが教えたのはほんとに基本的なことだけ、後は大河の力だよ。」
竜児「ほう…」
大河「恐れ入ったか!敬いたくば跪け、駄犬!」
櫛枝「大河も意地張っちゃってー。竜児のために竜児のために…って実に健気でわたしゃ涙が止まらなかったさー!」
大河「み、みのりん!?」
櫛枝「高須くんも幸せだねぇ〜、夫思いの嫁さんがいて。眩しい、眩しすぎるぜ、おまえら!」
竜児「お、夫!?嫁!?」
大河「みのりんのバカ!」
櫛枝「何も聞こえんね〜。じゃわたしは先に行くよ、さらば!」
大河「…何ニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い。」
竜児「お、おまえこそ顔真っ赤だぞ。」
大河「う、うるさいっ!わ、わたし達も急ぐわよ!」
昼休み〜
川嶋「高須く〜ん!はいっ、亜美ちゃん特製弁当!」
大河「ありがと、ばかちー。」
川嶋「なんであんたが受け取るのよ…」
大河「飼い犬にあげる餌はわたしが決める。だからわたしが預かる。わかった?」
川嶋「…高須くんはわたしの手作り弁当食べたいよね?」
竜児「あ、ああ…」
大河「竜児?」
竜児「あ、いや、今日は…」
櫛枝「あーみん!ダイエット戦士の席はこっちだぞぉぉぉ!」
川嶋「ちょ、ちょっと!みのりちゃん…!」
櫛枝「共に低カロリー料理に舌鼓を打とうではないか〜!じゃおふたりさん、ごゆっくり〜!」
竜児「(ナイス櫛枝!)」
竜児「川嶋には後で謝っとくか…さ、食うぞ。」
大河「ばかちーのことだ、きっと豪華で…肉もいっぱい入ってるに違いない!」
竜児「おまえ…それが狙いか…」
大河「なんとでもお言い、今のわたしには肉の言葉しか響かないのよ。」
竜児「肉と会話できんのかよ…」
パカッ
竜児「ほー…弁当も立派なもんだ!こりゃうまそうだな…って大河?」
大河「……」
竜児「おい、どうしたんだよ、ちょっと見せてみろ。」
竜児「のり弁…?しかものりででっかくバカって…」
大河「ばぁかぁちぃ…!」
竜児「そ、その黒いオーラを落ち着けろ、大河!しかしなんだってこんな…?」
大河「おめでたいほどニブチンね。あのバカチワワ…最初から…」
竜児「どういうことだ?だってそれ川嶋が俺のために…」
大河「あーあー、もういい。とりあえずこれで我慢してバカチワワは後でモルグに葬り去ってやるわ。竜児!」
竜児「?」
大河「夕飯は肉にしなさい、最高級の。」
竜児「はぁ?今日は鰤のタイムセールが…」
大河「聞こえなかった?に・く!って言ってんのよ!」
竜児「…わかったよ。料理してくれたご褒美だ。」
大河「わかればよい。さ、食べるわよ。」
川嶋「タイガーわがままな自分を少しは反省したみたいね。」
櫛枝「しかしひどいこと考えるね〜、お主もわるよのぅ。」
北村「おいおい、言い出しっぺは亜美だろ?俺はこんなことする必要なんてないと思ってるからな。」
川嶋「協力しといてどの口が言ってんの?でもバカな祐作にしてはなかなか良かったわよ。」
櫛枝「あーみんもいい演技してたぜー、主演女優賞をやろう!」
北村「しかし亜美もあのふたりがほんとに好きなんだな、亜美にいい仲間ができて俺は嬉しいよ。」
川嶋「…さむっ。あんた恥ずかしいセリフ吐くのやめたら?」
櫛枝「青春だねぇ、青春だよ。とりあえず、大成功ってことでふたりともハイタッチ!」
パァン
ーおしまいー
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