「・・・ほほう。『幸せの手乗りタイガー』とな?またお若いのに、希有なことを知っておるのう」
――噂では、あなたはその事を良くご存じだとか?
「おうおう、知っておるよ?そうじゃな、あれは・・・かれこれ70年以上前の話になるじゃろーか?」
――詳しくお伺いしても宜しいですか?
「それほど詳しいとは言い難いが、それで良ければ、ほれ、この茶菓子の礼に話して差し上げるよ」
――ありがとうございます。では、ズバリ核心からいきますが、『幸せの手乗りタイガ-』と言うのは、一体何なんでしょうか?
「また大雑把に聞くのう(笑)そうじゃな・・・信奉・・・とでも言っておこうか。手乗りタイガーに触れた者は必ず幸せになれる・・・とのな」
――それは都市伝説の一種ですか?
「あぁ、そこまで大袈裟ではないよ。何しろ、一つの高校でしか流行しなかった話だてな」
――?つまり私たちの通う、大橋高校のみの話だと?
「そうじゃよ。だがその当時、かなりの人がその伝説にあやかろうとしたもんじゃ」
――失礼ですが、あなたも?
「ああ、ワシに到っては、全く信じておらんかった」
――・・・それはどうして?
「・・・その大河の一番傍にいたのが、ワシじゃからよ・・・」
――大河?
「そう。手乗りタイガーとは、逢坂大河という、一人の小さな女子じゃった・・・」
――小さいから『手乗りタイガー』?
「そうじゃな。本人はえらく嫌がってたが」
――その方は、今どちらに?
「・・・さあなあ。学生時代は傍に居たワシじゃが、卒業してからの足跡は不明じゃ。元気でいるとよいのじゃが・・・(ここで涙を一筋流す)」
――・・・お好きでらしたんですか?
「・・・今となっては詮ない話じゃて。さて、そろそろよいかな?孫を迎えに行かなくてはならぬでな」
――お忙しいとこありがとうございました。
「・・・あらお爺さん。お客さまは?」
「帰られたよ」
「あらいやだ。折角お茶をお煎れしたのに・・・」
「まぁ仕方ないじゃろ。それより・・・大河」
「なに竜児?・・・あらあら、また懐かしい呼び名ですね?」
「今までありがとうな。お前のお陰で、俺は幸せだった」
「改めてなんです?そのまま死んじゃうみたいなオーラが出てますよ?」
「ああ。ぐっ!・・・」
「あ、あなた!?」
「も、もう終わりか・・・幸せの手乗りタイガーと過ごした日々、本当に楽しかったぜ(ガク)」
「りゅーじーっ!!!」
春田「ってーのを、今度劇団春田で・・・」
大河・竜児「やんねーよ!!」
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