今年の夏すっげー暑い・・・。
まだ6月入って少しなのに、真夏日だよこれ・・・。
じっとしてても汗だくになるよ・・なのに・・・。
「なんでくっついてるんだお前?」
「あん?」
ベッドに横になってる竜児の背中から抱きついていた大河が、めんどくさそーに声を出した。


『暑いんです!』


今日は土曜日。
折角の休みだから家で惰眠を貪ろうとしたら、あまりの暑さにそれを断念した。
そこで場所変えとばかりに大河の家に転がり込んだのだが・・・。
「まさかエアコンが壊れてるとは・・・」
「なんのことよ?」
「いや、だから」
ガバッと起き上がりつつ、竜児が額に浮かんだ汗をぬぐった。
「暑いだろ?」
「まーね」
「じゃあなんでくっつくんだおまえは?」
「そりゃぁ・・・ねぇ」
いきなり右手で頭を押さえられ、そのまま、またベッドに寝倒される。
そして今度は正面から抱きしめられた。
「なーっ!?あーつーいーってんだ!!」
「うるっさいわねー・・・窓から風が入ってくるでしょ?」
「これ風じゃなくて熱風だぞ!?」
「風にはかわらないでしょ?ったく細かいんだから」
それでもギャイギャイと文句を言ってると、抱きしめていた手がぱっと離された。
驚いて大河をみると、
「うるさい」
いきなりくちづけで口を塞がれた。



「んーっ!んーー!!」
抵抗しようとしたが、既に手は押さえ込まれていて、なすがままに口中を嬲られる。
竜児の弱いところを知っているキスは強烈で、クチュクチュと音が洩れるたびに、ビクンビクンと竜児の体が跳ね上がった。
数分後に開放されたとき、竜児は息も絶え絶えにぐったりとしていた。
「おとなしくなった?」
「な・・・なに・・すんだおまえ・・・」
暑い中酸欠にされ、頭の中がボーっとする。
そんな竜児をニヤニヤしながら、大河はもう一度抱きしめた。
「おとなしくしてないと、もーっと凄いことするわよ?」
「・・・」
その脅しが効いたのか、もはや抵抗する気力もないのか、ぐったりと竜児は大河の腕の中に納まった。
大河はニンマリと相好を崩しながら、抱く腕に力を込めた。
「・・・暑い−・・・」
「あーもう、しかたないわねぇ・・・」
呆れたように呟いて、大河は右手だけ竜児から離すと、なにやら枕元に手を伸ばして何かをイジッた。
ピッピッと、機械音が聞こえてきて、それからブオーッとコンプレッサーの回る音が低く響いた。
幾ばくも経たないうちに、冷たい風がひんやりと体を撫でていく。
あまりの心地好さに、竜児が小さく溜息を吐いた。
そしていきなりガバッと起き上がる。
驚愕と共に。
「ちょ・・っと待て・・・大河?」
「ん?なによ?」
「・・・エアコン・・・壊れてるんじゃ?」
「ああ。あれ、嘘」
「はあ!?」
あっけらかんと言う目の前の虎に、竜児が思いっきり素っ頓狂な声をあげた。
「あたしエアコンて苦手なの。冷えすぎると関節痛いんだよね」
デリケートだから。
そしてニッコリ笑ったりして。
「でも、暑い中抱き合うってのもなかなかいいものよね?互いの汗が混ざり合うっていうの?竜児の匂いが・・・あれ?竜児?どうかした?」
気がつけば、俯いたままプルプルと体を震わせている竜児を、ひょいっと覗き込む。
「泣いてんの?」
「泣くか!この・・・この、ド・変態っ!!」
「うん。だから?」
「・・・」
窓から差し込む日差しは強く、午後に差し掛かってもまだまだ暑くなりそうだった。
そんなある休日の昼下がり。




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