「な・・・なんなんだよ一体・・・」
叩き払われた手をみつめながら小さき呟く。
視線を上げた先、もう逢坂の姿は見えない。

『1話if・4』

いきなり頭に手を置いたのがいけなかったのだろうか?
さっきの豹変振りを思い返して首を傾げる。

『私に触るな!!』

言われた事をそのまま受け取るならそういうことなんだろう。
・・・でも。
あの時はそうしてやりたかったんだよな・・・。
あの時のあいつの顔を思い出す。
なんだかひどく脆いガラス細工のような顔。
不安と期待と恐れ。
それらが綯い交ぜになって現れたような顔だった
瞬間的に、安心させてやりたくなった。
そうだ、安心させたかったんだ、あの切羽詰ったような顔に。
その内情は知らないけど、少なくとも恐れるものなどここには無いと教えてやりたかったんだ俺は。
そこまで考えてはたと気付く。
何やってんだ俺?
「アホか。なに会ったばかりの奴に感情移入してんだ俺は」
やめだ。やめやめ。
軽く呟いて缶コーヒーを一口飲む。
そろそろ戻らないとHRに間に合わない。
知らない他人のことなど知ったことか。
「でも・・・」
それでも、何故かあいつのことが思い浮かぶ。
あの泣きそうな顔が脳裏に焼き付いて離れない。
「・・・ったく、なんなんだよ?」
残りを乱暴に飲み干し、ゴミ箱に力一杯放り込む。
「・・・くそ!」
言いようの無い苛立ちを抱えたまま教室に向かう。
ったく・・・自分のお節介に腹が立つ。
でももう苛ついてる時点で仕方ねえ。
「北村にでも、聞いてみるか・・・」
あいつなら、何かを知ってるかもしれない。
覚悟しろ逢坂。
こうなったら俺の気が済むまでとことん付き合ってもらうからな。
そう決意した時に予鈴がなって、俺は駆け足で教室に向かった。


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