お題 「卓袱台」「髪」「交際」



 大橋高校では、三年次の頭に三者面談がある。
 親が仕事の都合等でこれに参加出来なかった場合、後日家庭訪問ということになるのだが……


 独身が困惑している。
 まあ当然かもしれない。なにせ三者面談のはずなのに、卓袱台を囲むのは四人。
 俺、泰子、独身、そして、
「逢坂さん……なんであなたが……?」
「うちは〜、大河ちゃんも入れて三人家族ですから〜」
 答えたのは大河ではなく泰子。
「……ええっとですね……高須君のお母さん……」
 さらに混乱する独身に、さらに追打ちの一言。
「大河ちゃんは〜、竜ちゃんのお嫁さんでやんすから〜」
 ……今、独身のこめかみがピクっとしたような。
「……高須君と逢坂さんが交際してるのは、私も知っていますけど」
「交際じゃなくて、こ、婚約者ですけん!」
 大河……それは今宣言することか?
 ギギギと軋む音が聞こえそうな動きでこちらに振り向く独身。
「た、高須君、今のは……」
 無言で頷く俺。
「逢坂さんの親御さんは……?」
「……一応、了承済みです」
「そ、それは、よかった、ですね」
 平静を装っているつもりなのだろうが、明らかに笑顔が引きつってるぞ、独身……
「えと、先生、進路の話ですよね」
 ともかくさっさと本題を進めないと……
「そ、そうですね。ええと、お母様のご希望は?」
「やっちゃんは〜、竜ちゃんにはい〜っぱい勉強してもらって〜、えらい人になって欲しいでやんす〜」
「……それは、進学希望ということでよろしいですね?
 高須君は、以前は就職希望という話でしたが……」
「それなんですが先生、俺も進学を希望したいと思います」
「大学を目指すのね?」
「はい、経済的にはじいちゃんが多少援助してくれることになりましたし、
 将来的にきちんと自立できるような職に就く為には、やっぱり大学は出た方がいいと思いまして」
「そうね、先生もその方がいいと思うわ。
 だけど、あれだけ固い決意で就職を希望をしてたのに、よく考えなおしたわね?」
「それはまあ、色々ありましたし……何より結婚してからきちんと大河を養っていけるようになりたいですから」
「けっ、けっ、結婚……」
 ……しまった。思いっきり地雷踏んだ。
「結婚……教え子が先に……同窓会に呼ばれて……皆結婚してて……子供もいたりして……私だけ独りで……白髪にシワだらけで……」
 おーい、戻ってこーい。





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