木片を積み上げた塔の高さは当初のおよそ1.5倍。
 それに伴って細くなった塔は、僅かの振動でも崩れてしまいそうで。
 竜児は摘んだ木片にそろそろと力を加えていく。
 失敗すれば、待つのは破滅。ゆえに一瞬たりとて気を抜かぬように。
「た・か・す・く〜ん♪」
 艶めかしい声と共に耳に吹きかけられる吐息。一瞬動きが止まるが、なんとか耐える。
「あーっ!ばかちー反則!」
「体に触っての妨害じゃないもの、セーフよ。つーか!焼きそば食ってる箸で人を指すんじゃねーよ!」

 まあ、要するにジェンガ大会@『おれのこえ』なのである。罰ゲームつきの。

「高っちゃん、ほら、べろべろば〜」
「ちゃらり〜、鼻から牛乳〜♪」
 春田の変顔も能登の小学生のようなネタも無視。ポイントはヨガの呼吸法での精神集中。
「ふ……なかなか手強いね、高須くん。だがその鉄壁の牙城、この笑いの申し子たる櫛枝実乃梨が打ち崩してみせよう!」
 ニヤリと笑いながら実乃梨はマイクのスイッチオン。エコーも最大に効かせて、
「のっぴょっぴょ〜ん!!」
 ょ〜ん、〜ん……
 ……
 …………
 ………………
「……あ、あれ? おっかしーな……えと、それじゃもう一発……ぱんぽれぴにょ〜ん!!」
 ょ〜ん、〜ん……
 ……
 …………
「よし、抜けた」
 ほっと一息つく竜児。向こうで実乃梨ががっくりと崩れ落ちているが、今はスルー。
 バランスを崩さないように注意して抜いた棒を最上段に乗せ、
「逢坂、スカートの上に焼きそばがこぼれてるぞ」
「何っ!」
 北村の声に思わず振り返り、その拍子にジェンガはがらがらと崩れ落ちて。
「……あ」
「『あ』じゃないわよバカ竜児っ!」
 激昂して立ち上がった大河のスカートは染み一つなく真っ白。
「はっはっは、すまん高須、今のは嘘だ」
 なぜかイイ笑顔でサムズアップの北村に、竜児は絶句するしかなく。
「やったやった!高須くん罰ゲーム!」
「麻耶、喜びすぎ。高須くんに悪いわよ」
「そう言う奈々子だって期待してるんじゃないの?」
「……実はちょっと」
「ささ高須くん、約束どおりきっちりかっちり語ってもらいましょうか!」
 何時の間にやら復活した実乃梨がマイクを突きつけてくる。
 助けを求めて見回すも、周囲には期待に満ちた眼差し×7。大河は怒りと羞恥で顔を赤くしたまま視線を逸らせて。
「か……勘弁してもらえねえか?」
「今更逃げようったってそうはイカのなんとやらだぜ高須く〜ん。さあ覚悟を決めたまえ!」
 更にずずいと近づいてくるマイク。
「正直亜美ちゃんはあんまり興味無いんだけどね〜」
 そう言いつつ、亜美も好奇心を押さえきれない様子で。
「高須、ちゃんとルールは守らないと駄目だぞ」
 北村が示すのは、最初に決めた罰ゲームが書かれた紙。
『高須竜児・逢坂大河―――――ファーストキスの体験談を詳しく』



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